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空のように、海のように♪


パピヨンパパの思うこと
by willfiji
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断絶の世紀 証言の時代(読書no.474)

「断絶の世紀 証言の時代」(著・徐京植・高橋哲哉)(読書no.474

戦争の記憶をめぐる対話

断絶の世紀 証言の時代(読書no.474)_a0199552_18545897.jpg

2.3年前まで日韓関係は最悪と言われた。

最近、韓国を嫌いだという日本人が少なくなって良好な関係になってきた。

原因は韓国の政権が変わったからだ。


日本人の意識は変わったが韓国人の日本に対する意識はあまり変わらないという。

政権によって左右される好き嫌いではなく根本にある問題を解決しないことによる「断絶」が問題だと本は指摘する。

憲法を改憲しようという動きがある。

日本を守るという主張だが改憲の中心になる人は日本の戦争は正しく慰安婦や徴用工もなかったとして日韓の和解を遠ざけている人でもある。

根本を解決できない人たちだといえる。

根本の問題を解決することが平和憲法を簡単に改(壊)憲させないことにもつながる。

そのために以下ボクの心に刻まれた二人の「ことば」を特筆する。

1991年慰安婦として名乗り出る人が現れた。

1996年慰安婦関連記事の削減を要求する新しい歴史教科書をつくる会が発足。戦争の記憶は否認、抹消、隠蔽という暴力にさらされた。街にヘイト本があふれる。

戦後の高度成長時代を生きてきた普通の日本人の普通さが潜在的な否定論を含みそこに断絶が起きる。

戦争中の日本軍の残虐行為や植民地における迫害行為はまさか自分の父や祖父の世代の日本人がそんなことをするのは想像できないと考える人がいても仕方がない面がある。

いつまでも加害者として名指し続けられるのかと被害者側が指弾される実体もある。

日本の否定論は証人を人間として認めない人種差別意識の現われで「慰安婦さん日本のために働いてくれてありがとう」という漫画が人気を呼ぶ事象は被害者の神経を逆なでするもので多くの日本人がそのままに受け取る姿は証人たちをもう一度殺している行為ではないか。

慰安婦や徴用工の問題を過去の克服という言葉で退けるのは過去にけりをつけて新しい時代に入っていこうとする暴力。

靖国参拝は300万国民の犬死論から発する。靖国は2000万のアジア死者を哀悼の対象にしていない。犬死論はなぜ戦争で死んだのかをあいまいにして無意味な弔いを装う。あの戦争が侵略戦争であったという本質的な意味を抜き取ることでしかない。

アジアで侵略行為中に死んだ将兵が自分たちを守って死んだ死者になってしまうのはおかしい。

学徒出陣は最終局面だから被害者意識が強いからその運命の不条理を祖国のために死ぬという美学によって納得させようというもの。

被害者と加害者という基本的ジャッジメントをゆるがしてはならない。個々人のかけがえのない死を個々に深く悼むことが死の意味づけを国家が独占することの抵抗になる。

ジャッジメントを行う時は可能な限り他者の立場に自分を置くという想像力が必要。

日本の参政権のある日本国民は戦後生まれであっても戦争責任に対して応答責任がある。

日韓条約で法的決着したと思っていたものでも歴史は常に再審されるもので他者に開かれている。

いつまで保障が求められるのかという人は自分たちがやってきた非人間的行為が反転して自分たちに向けられるという本能的な恐怖が認められる。

日本は正義を揶揄し冷笑することがブームになっている珍しい社会。

アポリア(難問)に対してオルナティブ(代替え措置)で答えられる社会。

ナラティブ(語り手によってストーリーが違う)正義という基準線が必要になる。

正義という尺度でつながるという理念を持たないかぎり断絶を超えられないと両者の意見は一致する。夢想を捨てるわけにはいかない。



# by willfiji | 2024-01-28 19:05 | 読書 | Comments(0)

「星を掬(すく)う」(読書no.473)

「星を掬(すく)う」(著・町田そのこ)(読書no.473

「星を掬(すく)う」(読書no.473)_a0199552_16121187.jpg
著者の「52ヘルツのクジラたち」の家庭内暴力を背景にした本と同様にこの本も一般的ではないが特殊でもない家族の関係を現代社会の一面としてみごとに描きだしている。

芳野千鶴22歳。彼女のラジオ投稿メールが幼い頃別れた母親との再会につながる。

千鶴の前に現れた芦沢恵真はきれいな子だった。しっかりした言葉使いに自分より年下でも恵真さんと名を呼ぶことはなくしばらくの間は芹沢さんと呼ぶ関係だった。

千鶴は元夫弥一の暴力を受けていた。離婚したのに必要に追いかけ千鶴のパン工場で働いたわずかなお金をいつも持ち出し、拒むと暴力を振るった。

千鶴は母親に捨てられたから自分の不幸があると思い込んでいた。

ラジオに投稿したのは母と最期に二人で旅した思い出だった。夏休みの長い旅は楽しいものだったが最後は疲れてしまい迎えにきた祖母に連れられて家に戻った。


千鶴が戻りたいと言ったのだ。それ以来母とは会っていない。不幸な日々が続いた。父は死に祖母は次第に経済力を失った。千鶴は母親を恨むようになっていた。

高校を出た職場で弥一と出会う。優しかった弥一が事業に手を出し失敗してから暴力的に変貌していく。失敗が続き借金が膨らむ、祖母は他界し住んだ家は借金の返済のために売られた。返済を条件に離縁したのに弥一の無心は続く。

母親を知っている、話を聞きたいと言う人がいるとラジオ番組担当の野瀬からの連絡が入る。ためらいがあったが会うことにする。千鶴はマスクと眼鏡で弥一の暴力で受けた顔を隠す。直前になって精神の混乱が起こりトイレで嘔吐する千鶴。それを偶然に助けたのが会う約束をした芹沢恵真だった。

このまま野瀬の知るシェルターに移るよう勧める。

千鶴は拒む。自分の不幸を知らない恵真の行動を受け入れられない。恵真は強引に

自分の家に連れて行く。そこには母親の聖子がいた。

自分を捨てた聖子を千鶴は許せない。聖子からは詫びの言葉も言い訳もない。

恵真から聖子が若年性痴ほう症だと知らされる。進行は速い。


聖子と恵真はまるで母娘のようだった。

その家にはもう一人彩子という聖子より少し年下の女性がいた。

弥一の恐怖があって千鶴は外出できない。

そこは聖子が長年独居老人の家政婦をしていてその老人の遺言で遺された古い家屋だった。彩子は介護施設で働いている関係で聖子と知り合い住むことになった。

家賃の代わりに働きながら家事のすべてをやっていた。

芹沢恵真にも悲しい過去があった。両親が早世し伯母のもとで育てられたのだがその美しさゆえの不幸があった。従妹たちから疎まれ、伯母にも冷たくされた。風呂にも入れてもらえず服は古着、学校ではいつもいじめの対象になった。


信頼する先生に相談すると体を触られ、心に深い傷を負う。

美しい顔を持つことは決して幸福をもたらさない。

いつも男に狙われそれが同性の嫉妬を呼び、男を誘惑しているとされるのが常だった。


ストーカーから救ったのが聖子だった。男の人を寄せ付けない心身、恵真は女性専用の美容師になった。

そんな過去を知って千鶴は恵真を名前で呼ぶようになった。

家事をテキパキとこなし明るく千鶴に接する彩子にも母親のようなものを感じるようになる。

彩子の前にお腹が大きな美保が現れる。彩子の娘、まだ18歳。美保は男に騙されお金もなく彩子にすがるしかない身だったが当然だと彩子を攻める。

彩子は美保の前では従順な母親でしかない。千鶴は彩子が美保と別れた過去を知り美保の振る舞いの理不尽さを自分の姿に射影する。

母親はなぜ自分を捨てたのか?なぜ謝らないのか?


聖子の前では常に言いすぎてしまう。「みっともないから口を閉じろ、止めろと言う自分がいる。でもこれくらいいいでしょうという自分もいる」。

その答えを聞き出す前に聖子の痴ほう症が進む。

「謝るのは許すことを強要する」。簡単に謝るべきではないから謝らないのか?

痴呆症は正常である時もある。聖子は悪化して行く自分を自分で確かめ失禁にショックし自らの尊厳を守るべく介護ホームに入るという遺書を示す。

恵真は最後まで聖子を自分がみると訴える。

千鶴は母を許せないが母の生活費でここにいて、弥一から逃れて家の中に閉じこもる。一生それでいいのかと自分を問う日が続く。

美保の振る舞いはお腹が大きくなるに比例するように横暴になる。

物語は解決の糸口をさがして現代社会の病理を浮かび上がらせる。

突然、男が現れる、恵真のストーカーだ。その後ろに弥一、美保のSNSで居場所がわかったのだ。足が動かなくなる恵真と千鶴。逃げろーと男に体当たりしたのは聖子だ。

「他人の悪意に負けて自分の生き方を狭めるなんて許されない」。「私の人生は最後まで私が決める」。これがこの本のテーマだ。

聖子の痴ほうを超えた我が子を守る本能が千鶴の過去を一掃する。



# by willfiji | 2024-01-21 10:50 | 読書 | Comments(0)

「明治維新偽りの革命」(読書no.472)

「明治維新偽りの革命」(著・森田健司)(読書no.472

「明治維新偽りの革命」(読書no.472)_a0199552_10043240.jpg
副題は『教科書から消えた真実』。


この本を知ったのは庄内藩を取り上げたNHKの番組で著者のコメントがボクが求めていたものだったからだ。

同期の旅行では定期的に東北に行く。幹事が東北出身ということもあって、名所旧跡を巡る旅。そこで特に知ったのは明治維新の解釈が偏っているということだった。

旅行が定期的になったのと時期を同じくして誕生した第2次安倍政権はいままでになく右傾化し時代錯誤の明治回帰ともいえる皇国史観を呼び戻していた。

維新の新政府は西郷隆盛や高杉晋作、吉田松陰や坂本龍馬という偉人を生んだ。

新選組や会津藩は旧体制保持の賊軍だったと思わされていた面があるのは否定できない。

だが皇国史観を持ち出し戦争を美化する風潮にみられる明治維新時の新政府礼賛は偏っているとこの本を手にした。

本の中で面白いのは今まで考えられていた認識が覆ったことだ。

徳川最後の将軍、慶喜の評価は一般に低い。

鳥羽、伏見の戦の新政府軍の勝因は慶喜が逃げたからだという話になっている。

慶喜は新政府が錦の御旗を立てたと知ると恭順しその後も戦う姿勢を見せなかった。

対して著者は慶喜が日本の植民地化を救ったと記す。当時、イギリスとフランスが新政府と幕府の後ろ盾になっていた。もし慶喜が最期まで戦ったら、イギリスとフランスは日本を2分して植民地化した展開にもなったという。

その上慶喜の出身である水戸藩は徳川家の中でも尊王で朝敵になってはならないと光圀の教えが継がれていた。慶喜によって日本は植民地にならなかったのかもしれない。

江戸庶民が抱いていた感情がどんなものだったか当時の「判じ絵」から世相を知ることがこの本の中核になっている。

200年続いた徳川幕府は平和で治安のいいことで江戸っ子に支持されていた。


江戸に来た薩摩藩の狼藉はテロに盗賊で幕府を挑発する。

西郷隆盛は幕府の転覆を図り江戸の町を不安に陥れた。


江戸警備にあたった庄内藩による薩摩藩邸焼き討ちは西郷の思惑通り。

当時江戸の庶民の大半は佐幕派。薩長が行った行為は近代国家を作るための方法としては過剰に暴力的であり極端に利己的だった。

戊辰戦争は薩長土肥を主流とする新政府と奥羽列藩同盟31藩との戦い。


同盟の中でも日本最大の地主本間家に支えられた庄内藩は有名で新政府軍に連戦連勝。


また会津藩も白虎隊で知られるように同盟から抜け落ちる藩が続出しても幕府への義を通したその志は武士の本懐として語られることが多い。


両藩とも教育に力を注ぎ藩校のレベルは薩長以上のものだった。

ボクも同期旅行で藩校を巡りその実態を知って驚いた経験を持っている。

戊辰戦争が長引いたのは薩長が和議をあえてしなかったことによる。


新たな政治権力を薩長のみが持つことを意図したのだ。新政府に会津藩主松平容保が恭順の意を示しても薩長は受け入れなかった。

18684月の江戸城の無血開城は勝海舟と西郷隆盛によって為された。


新政府を放置すれば江戸は焼き尽くされ多くの命が失われると考えていた勝が名もない庶民の命などどうなってもいいと考えていた新政府や西郷を説得した。

ボクはセゴドンと呼ばれる西郷隆盛の本を何冊か読み偉人の一人だと思っていたが少し違うようだ。だから歴史は面白い。


新政府はイメージ刷新に動く。西郷さんのイメージは上野の銅像によって作られる。人畜無害な商家のだんなだ。

この本の「尊王攘夷」思想の捉え方は最も我が意を得た。


長く続いた幕府政治の終わりを夢みた薩長の武士を支えたのは「尊王攘夷」思想だった。

ペリー来航によって幕府が開国に動きそれを阻止しようと下級武士が下剋上を起こすという筋書きが明治維新の幕開けなのにいつの間に攘夷が開国に代わったのか?

維新の中でも偉人とされる吉田松陰は攘夷思想の代表、彼を師と仰いだ人たちがどのように開国になったのか?


攘夷はナショナリズムであって幕府によって定められた階級に閉じ込められていた若者が飛びつく思想だった。


攘夷思想に固まった武士がイギリス、フランス人を殺傷する。

薩長は英仏との戦争でその強さを思い知る。


新政府はプロパガンダのために平田篤胤を源流とする平田学派を重用する。


平田学派が攘夷思想と開国を上手く結びつけた。


篤胤を経由した日本書記や古事記は大攘夷という。

攘夷には小攘夷と大攘夷があって新政府は大攘夷の立場だと開国に進んだ。

外国と開国してやがてその外国も天皇の統治下に置くという思想が大攘夷。


天皇による中華思想だ。

この思想がやがて富国強兵を裏付ける皇国史観となった。

ボクはやっと尊王攘夷が開国になった理由にたどり着いた。

歴史は学べば学ぶほど面白い。民主主義対専制主義と問われる今。

右傾化社会は民主主義とは相反している。


尊王攘夷と同じようにその本質を見極めることが肝要だ。



# by willfiji | 2024-01-14 18:04 | 読書 | Comments(0)

空海の風景・上下巻(読書no.471)

「空海の風景・上下巻」(著・司馬遼太郎)(読書no.471

空海の風景・上下巻(読書no.471)_a0199552_09533387.jpg

高僧や宗教家がこころについて神や仏の言葉をどう受け止めるかを対談や講義によって語る「こころの時代」というNHKEテレの番組がある。


ウクライナ戦争が続く中パレスチナも戦禍にまみれ、日本は武器輸出を国会審議なしに決めてしまった。命の価値を軽々しく扱う人間の愚かさに直面する今日この頃。

こころをテーマにしたこの番組はボクの無力感を少し和らげてくれている。


空海が紹介された。番組は司馬遼太郎著の「空海の風景」に沿って空海その人を追った。


ボクが今まで読んだ司馬遼太郎の本は「龍馬が行く」も「坂上の雲」もかっこよさに爽快観を持ったが身に感じ入るには至らなかった。いわゆる司馬史観に疑問を持ったからだ。司馬より周五郎や荘八、周平の小説に軍配をあげていた。


番組は空海が今でも中国の人に愛されているという街を紹介した。その寺は空海が祀られ集う人々は弘法大使を慕う四国遍路の行人と変わらなかった。今は亡き司馬遼太郎が空海が立った長安(現西安)で語る姿もあった。


空海は奈良時代、四国讃岐で豪族佐伯氏を継ぐものとして生まれた。

サエギは東北の異種族をさし空海には蝦夷の混血が入っていたからこそ天才だった。

空海は奈良の大学に進むが中退し24歳で四国遍路、31歳の時遣唐使となる。


この遣唐は804年、4艘の船で出向する。荒波の中漂流、空海の船がたどり着いたのは予定地より南下したさびれた漁村で空海達は海賊と疑われる。空海がその地の長官に書を送る。書の格調高さと溢れる教養に長官は感激し倭国からの正式の使者と知り長安へ空海たちを案内する。


空海は既に唐の言葉を会得していた。空海には密教を学ぶという使命感があった。

入唐までの7年間、空海は山にこもり自学自習し心身をも鍛えた。


空海は学問の主流である儒教は世俗の作法に過ぎない、密教こそ仏教の完成した形で純粋密教は釈迦教の一大発展形態ではないかとの考えに至っていた。

司馬は空海とともに最澄も著す。最澄は空海より78歳年上、祖先は朝鮮からの渡海人。空海とともに遣唐使として入唐するが船は違った。


最澄には桓武天皇の擁護があった。密教ではなく天台宗を極める目的があった。

ボクは空海の真言宗も最澄の天台宗も密教だと思っていたが空海は天台宗を顕教だと下に見ていたとこの本で知った。


顕教と密教の違いは教を学問として学ぶか自らの身を仏神になるべく修練するかの違いだがその境地は難解だ。


空海は長安青龍寺で密教を学ぶ。


驚くことに青龍寺の恵果和尚の下には1000人の僧がいたが空海は密教の正嫡者とされた。密教はインド僧金剛智が中国にもたらした。金剛智が不空に不空が恵果に伝えた。


それを日本の僧である空海が引き継いだ。密教の正嫡が日本に渡ったのだ。


そのころ長安は世界最大都市、仏教はもとよりイスラム教は祆教(けんきょう)、キリスト教は景教と書されたように世界の宗教が入り込みそれぞれの教えの館が立ち並んでいた。


この時代は玄宗皇帝と楊貴妃の時代の少し後。

50代の玄宗と20代の楊貴妃を空海はどう受け止めたのだろうかそんな疑問を持ちながら書を読み進む。


空海の渡航期間は僅か2年だった。空海はこの短い時間でもサンスリット語をマスターする。空海もすごいが司馬遼太郎もすごい。空海やその弟子が書き記した御請求目録、真言付法要抄、秘密曼荼羅教付伝、宗高僧伝、その他日本書記、続日本後記などを読みつくしこの本を著している。


空海は461巻の書目を写し取り長安から持ち帰る。帰国後都に登らずその整理にあたった。一方最澄は帰国後すぐに桓武天皇に会い天台宗を奈良仏教と同格の地位を得る。それは奈良仏教の強さを懸念した桓武天皇の意向であり最澄は天皇の後ろ盾で比叡山に天台宗本山を持った。


空海は最澄を快く思わなかったが最澄は気性も穏やかで年上であっても空海に教えを請う姿勢を取った。桓武天皇が亡くなり2代後の嵯峨天皇は空海に心酔し書を習い師として優遇した。空海は奈良仏教の別当となり高野山に真言宗寺を創建する。


最澄は奈良仏教と相入れなかったが空海は奈良仏教を密教の大日教的世界に類似する華厳教に通じるとして奈良仏教との関係を保った。

パレスチナの問題を想起すれば宗教が戦争の元凶だとも思う。

ユダヤ、イスラム、キリストはともにエルサレムを聖地とする。

大もとの神が一致するからで、3教が共存した時もあった。

戦争に至るのは異端を認めない一神教だからだと言う人も多い。


仏教はどうか?密教の祖は大日教で釈迦はその後の人だと仏を語りながら空海の主張は最澄天台宗と違うと壁をつくる。司馬は日本の仏教界が壁を作ったのは最澄の一番弟子が空海の下に走ったことにもよると記述して奈良仏教、最澄天台宗、空海真言宗の微妙な位置関係を示す。


面白いのは桓武天皇が最澄を、嵯峨天皇が空海を、優遇したことだ。ちなみに今の天皇家の宗寺は空海の真言宗。天皇が日本古来の神道の神官の長であることを考えあわせると宗教はますます複雑だ。


「こころの時代」の番組をみながら仏教の教えと世界平和がどうつながるのかどうしてもそれが知りたかった。


空海も最澄も平和とか戦争に特筆していない。

言及しているのは仏心だ。人間にある欲を飲み込んでいくのか?あるがままに受け入れるのか?経を読むことによって得られるのは自分が仏になることなのか仏に委ねることなのか?


「人間の悪行を無くすことはできないがせめてより良い自分でありたいと願い精進することだ」と心の時代の教えは伝えていた。



# by willfiji | 2024-01-02 11:13 | 読書 | Comments(0)

伊能忠敬・生涯青春(読書no.470)

「伊能忠敬・生涯青春」(著・竜門冬二)(読書no.470

伊能忠敬・生涯青春(読書no.470)_a0199552_11230544.jpg

江戸時代、日本全土の地図を作った伊能忠敬の名前を知らない人はないだろう。

副題の「生涯青春」が興味をひいた。ボクがリタイヤした時、先輩が贈ってくれた額に入った色紙は「一生勉強、一生青春」(あいだみつを)と記されていた。先輩の座右の銘。ボクも同感だった。


伊能忠敬は1745年千葉九十九里浜に近い漁村に生まれた。18歳で下総佐原の伊能家の婿養子になる、妻は21歳、夫を亡くし子もいた。伊能家の養子になって家業を立て直した。


数学が得意で商才にも長けていたからだ。

忠敬は名主として凶作を切り抜けた。奢ることなく財を地に資して佐野の人たちは飢餓に陥ることはなかった。天明の大凶作を克服した時期は田沼政治が終わって松平定信政治がはじまった時期であり国防問題と日本の全国測量が求められた時代でもあった。


忠敬は貧しかった幼少の頃から星を見て思いを巡らせ天体の神秘に引き寄せられていた。


家業をやり抜いた時、隠居して、やりたいことをやるといつの日か心に決めた。

好奇心と情熱は時に孤高の姿になる

気が強く言いたいことばかり言う、客観的態度を取り場合によってはクールで冷たい印象と評価されることも多い忠敬に「青春とは年齢ではない好奇心と情熱だけだ」とサムウエルマンの言葉を著者は添える。


やりたいことをやるまででも忠敬は怠ることはない。「今この時、何かに対して行っていることが重要で結果が重要ではない」ボクが達したいと願う心境だ。


忠敬51歳、待望の隠居となる。伊能忠敬が選んだのは幕府に新たな暦を作るよう命ざれた高橋至時(よしとき)31歳だ。忠敬に長幼の礼は不要。至時はすでに平方根や立方根を使いコペルニクスの理論は伝えられていなかったが地動説の知を備え、子午線を測定する三角測定法をわきまえていた。


1797年ロシアが択捉島に上陸すると幕府は探検隊を派遣して日本という標識を立てた。先導したのは高田屋嘉平という商人だった。


伊能忠敬がやりたかったのは緯度一度の距離を確定し地球の大きさを知ることと日本国の海岸線を明らかにすることだった。忠敬の願いは幕府が求めていたもの沿岸測量が幕府令となる。


忠敬は名字帯刀を許されていたが身分は農民。地方の国々は藩によって治められ、僅かな友を連れて徒歩で測量する忠敬に各藩の協力はまちまちで妨害する藩もあった。


1800年、蝦夷地の測量が始まる。その他各地を測定し沿岸地図と名付けられたこの地図は見て楽しい絵画的な工夫がこらされていた。1804年、この地図を11代将軍家斉に上覧し忠敬は徳川家直参となる。そして181874歳で亡くなる前まで忠敬は全国を歩く。


死後2年後大日本沿岸全図が完成した。


好奇心と情熱の忠敬を支えたのは教育だった。鎖国の中でも西洋の学問は中国で漢字に訳され日本に輸入されていた。各藩は藩校を作り幕府も教育に力を注ぎ世界の動静を掴んでいた。この力が日本が植民地にならなかった基盤になった。


教育の無償化が政党間で叫ばれている現在、その主張は選挙目当てで学問を通して日本を豊かにするという視点が欠けている。

カジノや軍拡を標榜する政党に教育無償化は似非学問の無償化になる。それでは日本を豊かにする教育はできない。


「政治は力、力は金」を地でいった自民安倍派のほころびが無限大だ。


それでもつい去年の国葬時さえ支持する人がいた。まだまだ国民は政治に無関心、沈黙は民主主義の敵だと国民が気づくまで忠敬のように「すべて時が解決する」と星を見ていたいと思う。



# by willfiji | 2023-12-17 10:57 | 読書 | Comments(0)