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空のように、海のように♪


パピヨンパパの思うこと
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「蝦夷地別件・上・中・下」(読書no.239)

「蝦夷地別件・上・中・下」 (著・船戸与一)

「蝦夷地別件・上・中・下」(読書no.239)_a0199552_10183984.jpg

和人とアイヌの人たちの歴史は謎に満ちている。縄文にさかのぼればこの人たちが日本人の主流だったのかもしれない。


以前読んだ「琉球処分」と同じように日本人として知っておかなければならないアイヌの人たちの歴史の一編を史実を踏まえて著者は長編に記した


時は江戸末期、田沼意次が退いて松平定信が幕政を握る、蝦夷地にロシア艦隊が現れ、交易を要求される。北海道を日本の地にするために和人が入り込みアイヌ人の同化が始まった、もちろんアイヌの人たちの身分は和人と同等ではなかった


アイヌの人たちは独自の言葉を持ち縄文人がそうであったように農耕をしない。

狩猟民族であり当時は山と海からその糧を得ていた


山からはクマや鹿、海からは魚の他にラッコやアザラシ等が豊漁で北海道から千島、樺太までアイヌの人たちのくらしがあった


田沼時代に北海道の統治を任されていた松前藩を通してアイヌの人たちが和人に搾取される体制が出来上がった、定信は北海道を松前藩から取り上げ幕府直轄領と目論む。


物語は東蝦夷といわれる今の釧路から北方領土である択捉(エトロフ)国後(クナシリ)の地で起こったアイヌが和人の中に理不尽に組み込まれていく姿を描く。


人々の生き方が何によって支えられるのかを問う深いテーマがある。


和人に虐げられるアイヌの人、藩に一身を捧げる人、幕府に身を置き外国から日本を守ろうとする人、それぞれの立場が交錯する。人は何をよりどころに生きるのだろうか。

明治維新前のアイヌの問題は日本の大きな流れの中に消えてしまったからアイヌの世界の神秘性が今に続く。人権がなかった江戸時代、アイヌの人たちの生活は明治を迎えるために日本の中に同化変容した。


基地問題を背負う沖縄のような状況ではないためにその存在は忘れられ沖縄ほど問題視されない。

世界にはクルド人やロヒンギャのように国を持たない民族が新たな国際紛争の火種となっている。スペインのカタルーニャやアイルランドの独立問題もある。


和人は武力によって蝦夷を平定しアイヌの人をそして千島と南樺太を日本領土にした時、
アイヌと同族といわれるクリル人やニプヒ人も日本人の中に組み入れた。

先の戦争では日本軍として戦った人もいる。


ボクはこうした人たちのことを思うたびに領土問題を考えてしまう。戦争はかつて勝敗によって国の権利獲得手段であったものが今は人間の愚かさの証と映る。


戦争の火種である領土問題は人類の知恵として国際社会が一致して平和理に一掃する必要があると思う。


北方領土はこの本でも明らかなようにアイヌの人たちが先住者であった。

日本に生まれれば日本の領土だと主張するのは誰にもあることだが歴史を知り、知識を得ることによって戦争の火種になる領土問題に対しても寛容な立場を持てるようになる。

ナショナリストはそれができない。民族の問題も同じでこの本を例に出すまでもなく和人の中にもアイヌの人たちから隣人と慕われた人もいるし略奪差別した人もいる。


アイヌの人たちも武器を持って日本人を殺害した人もいれば身を守るために理不尽を受け入れた人もいる。民族は国家を作るが民族によって人格が変わることはない。


差別主義者は民族を単一な性格を持つものとして一般化するがそれは稚拙だと言わざるを得ない。

アイヌの人たちとの繋がりを読み解くとアジアから千島、アリューシャンを渡り、北・中・南アメリカまで到達した人類の雄大な旅にまで思いは巡る。


そうした俯瞰図を見れば国同志の争いの火種がいかに小さなものなのかとの考えに及ぶはずだ。



by willfiji | 2017-11-28 10:28 | 読書 | Comments(0)

「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀」(読書no.238)

閉じてゆく帝国と逆説の21世紀」 (著・水野和夫)

「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀」(読書no.238)_a0199552_17362320.jpg

世の中が変わって来ていると思ったのはいつの頃だろうか?


成長が止まって、失われた
20年と東日本大震災、原子力が人類進歩の象徴だったが崩れた。エネルギーの見直しが直ちに行われるかと思ったがそうはいかない。


安倍政権に元内閣官房審議官の著者が異を唱える。著者は「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書)で一世を風靡した、この著書はその後に起こった事を検証する中で脱近代が
100年単位で成されることを示唆する。


著者はマイナス金利を成熟社会の終焉としてその先頭にあったドイツと日本を対比する。

ドイツはEUという帝国を作り上げ新たな時代に進んでいるが日本はいまだに過去にこだわり自身の存在保身に突き進んでいる。


トランプ大統領の訪日があった。すべてが日本の米国追従の関係を表していた。


日本はまるでアメリカの占領下にあるようだ。

直前に行われた選挙結果にボクは日本のなさけなさを感じざるをえなかった。

人柄が信頼できない政権を再び選んだ国民を国民として恥じた。


なぜ愚かな道を選ぶのかそんな心持ちがこの本を手にした理由だった。

冷静に考えれば与党自民党に投票した人は18%。

だが選挙制度によって国会の2/3の議席を与えてしまった。


トランプ氏や安倍氏が国家の首脳となることそのものが資本主義終焉の象徴的出来事だと著者は捉える。

両首脳はゴルフと飽食に興じ、北朝鮮の危機を煽りアメリカファーストを共演した。


それは脱近代をめざす世界の在り方を模索する深い洞察を真摯に希求すべき時代をふまえる首脳としての態度からは程遠いものだった。


日本はアベノミクスで目論んだインフレ目標に到達することなくますますデフレマインドが広がる状況にある。


先日同期で会したが政府の金融緩和政策によって起こるのは円安株高であってゼロ金利に対応すべくメンバーは株によっていくばくかの利益を得ているが、この状況が平常だと思っている人は一人もいなかった。つけは将来にまわされ出口は遠のく様相だ。


マイナス金利というデフレをつくりながらデフレ退治を宣言するというマッチポンプは北朝鮮危機を煽り権力を握り続けることと共通点がある。


安倍政権における集団的自衛権容認や共謀罪は安全国家という言葉の中にあるのはテロリズムの予防ではなく市民をコントロールすることを狙っている


トランプ大統領の訪日で見られた隷属的日本の状況を賛美する人たちが自称愛国者であるようなことにボクは危機感を抱く。

現憲法が米国に押し付けられたものだという理屈と日本の自衛隊に負担を担わせることがアメリカの圧力に屈したものであることに矛盾を感じない改憲論者の主張はあまりにも稚拙だ。


著者は人間の求めるものは「愛・美・真」であり「科学と指標的成長によって獲得される余暇を賢明で裕福な生活のためにどのように使えば良いかという問題に直面するだろう」というケインズが遺した脱近代の言葉を引用して、新しい社会の実現を良識の中から見出そうとしている。


少なくともこの良識のない首脳を選んでしまった国家は盲目的に富を求める近代社会の呪縛から解かれる時が遅れてしまっていることは確かだ。



by willfiji | 2017-11-24 17:54 | 読書 | Comments(0)

「マチネの終わりに」(読書no.237)

マチネの終わりに」 (著・平野敬一郎) 

「マチネの終わりに」(読書no.237)_a0199552_11310497.jpg
大人の恋愛小説である、芥川賞作家だけに言葉の連なりを洞察する簡単ではない文章が続く

蒔野聡志は天才と言われたクラシックギター演奏者、小峰洋子はパリに本部がある通信社に籍を置く美しいジャーナリスト。ふたりは蒔野のコンサートで出会いお互いに惹かれるようになる。洋子にはアメリカ人の婚約者がいた。


ヴェニスに死す症候群とはこの小説が生んだ言葉だ。

「中年になると突然現実社会への適合に嫌気がさして本来の自分へ立ち返るべく破壊的な行動にでること」の意味がある。


洋子は
40歳のその時イラクの特派員。フセイン亡き後の混迷期だ。テロに巻き込まれ危機一髪で助かったが洋子はPTSDに悩む。


世界の政治状況を反映させてこの恋愛小説が展開する。ジャーナリストや芸術家は一流であればあるほど権力に対してその術で物申す。服従を嫌い自由を求めるからだ


恋愛物語の中で著者は洋子を通して難民問題を描き戦争は問題解決にならないことを示していく。


他にも聖書の中にあるマルタとマリアの話が興味深い。

イエスの姉妹である二人がイエスを迎え、姉のマルタは食事の用意や部屋の準備に甲斐甲斐しく働くが妹のマリアは何もしないでイエスの話を聞くばかりだ。マルタはイエスにマリアは何もしないと訴えるがイエスはマリアこそ私のために話を聞いてくれると退ける。


大人の恋愛はマルタかマリアか、

ボクも含めて多くの人はマリアを求めながらマルタといることが幸せだと感じているのだろう。
人は両面を持つ存在でそれを際立させるのが小説だと思えばよいのかも知れない。



by willfiji | 2017-11-06 11:37 | 読書 | Comments(0)