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空のように、海のように♪


パピヨンパパの思うこと
by willfiji
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「宝島」(読書no.309)

「宝島」(著・真藤順丈)Hero’s Island
 

「宝島」(読書no.309)_a0199552_18011960.jpg

沖縄の事を知る本は琉球処分が有名で明治政府が日本国に取り込んでいった歴史事実がよくわかる。

今回手にした宝島はフィクションであるが、太平洋戦争直後から本土復帰までの琉球人たちの島に寄せる思いを今一度日本人として捉えることができる優れた歴史小説になっている。


オンちゃんは親友のグスクと弟のレイを伴って、統治していたアメリカ軍から物資を盗みそれを糧に生きている。彼らはこの島の人たちからも羨望の的だった。戦利品は敗戦で基盤を失った人たちに食料、医療、日常品、そして銃器までもたらした。オンちゃんの戦利品を得るための準備は周到だった。決して捕まらず帰ってくることが誇りだと危ない橋は渡らなかった。

オンちゃんこそ島のリーダーだった。オンちゃんのそばにいつもいた女の子は少女に成長していた、ヤマコと呼ばれた。

この4人は戦争末期アメリカ軍に追い詰められ、家族と逃げ込んだ洞窟で起こったことが心の深い傷として残っている。軍服を着た日本兵が命令口調で「出てはならぬ、ここで死ね」とアメリカ軍が投降を呼び掛ける中銃を向けた。多くの家族が命を絶った出来事だった。

4人はそれぞれの家族を失い、路頭に迷いそれでもなんとか生き延びて生きる術を持った。それがアギャーというアメリカ施設から物資を盗み出す盗賊生活だった


ただの盗賊と違ったのは奪った物資を島の困ったひとたちにも分け与えたことだ。オンちゃんは英雄だった。


いつもは仲間と仕事をするが、その時は違った、アギャーの何組かが合体した大規模なものだった。裏切りがあった、オンちゃんはその日から姿を消した。


残った
3人はその後それぞれの道を歩む。レイはヤクザにグスクは警官にヤマコは教師になる。琉球の本土復帰運動が始まる。沖縄の人たちの思いは戦前の平和な島の復活だった。


アメリカ軍に統治された社会は琉球処分以後の日本統治以上に人権無視がはなはだしいものだった。日本政府は本土の基地反対運動をそらすために沖縄を利用した。


アメリカは沖縄返還後も基地機能を失わないことを前提に日本政府と密約を交わし復帰を認めることにした。

琉球には琉球の歴史がある。琉球処分と同じように今の沖縄を考える上で重要な視点がこの本にもある。


琉球はかつて中国と日本の間にあって両国とのバランスを取りながら独自の生活圏を持っていた。明治以後は清国の衰退もあって日本に組み込まれていく。琉球は韓国、台湾、満州とは違った特殊な地域だった。


太平洋戦争によって日本はアメリカ統治下に入るが日米同盟の下主権を回復する。


沖縄が復帰するにあたり日米は密約を結ぶ。

沖縄復帰のスローガンは「核抜き本土並み」であったが、復帰後40年以上経ってもそれは果たされていない。


戦後沖縄は基地依存の歴史があったがそこから抜け出した今こそ、沖縄に民主主義社会が実現する。


香港で今中国政府に対しての抗議デモが大規模に行われている。中国の一党独裁政治に民主主義が対峙している動きだ。この運動が香港の自由獲得に向かうのか?それともつぶされてしまうのか?共産主義、自由主義を問わず独裁政治が世界的に拡大している現在、楽観的ではいられない。


中国を批判しながら、沖縄の人たちがあれほど反対している辺野古基地移設を推進する政権を支持する人が日本にもいるのが悲しい現実だ。
日本の民主主義の基盤も中国や北朝鮮と同じように人それぞれの生き方の多様性を認めない政権によって歪められていることを日本人として心しなければならないだろう。


オンちゃんは英雄だった、レイ、グスク、ヤマコは沖縄の権利を求めていく。彼らはこの世界はいったん転がりはじめたたら止められない物がある、貧乏とか病気とか暴動とか戦争とか、そうゆうものを止めるのが英雄、この世界の法則にあがらえるのが英雄だとオンちゃんを慕う。

世界が独裁に向かうゆらぎを示している今、一人一人に英雄の灯がともることを願う。



by willfiji | 2019-06-15 18:12 | 読書 | Comments(0)
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