「ダーウィンの遺産」(著・渡辺正隆)進化学者の系譜
毎週録画して、時間のある時に観ているのがNHKの「ダーウインが来た」だ。ほとんどの番組がバラエティー化して、動物番組も動物の赤ちゃんでお茶を濁す、
そんな中にあって、この番組はレベルが高い。そのダーウィンの残した偉大な功績を記す。
ダーウィンはコロンブスと同じように、キリスト教の教えがほとんどの事象に信じられていた時代に、全ての生き物の元は同じだと神が人間を神に似せて作ったとしていたことに対して
ダーウィン的転換をしたのだ。
ダーウィンは200年前の人だ。ダーウィンは
ビーグル号に乗ってガラパゴス諸島に上陸する。そこで見た動物から進化論が生まれた。
この本は進化論をめぐる学者達の関係や主張を詳細に書き出し動物の謎を解き明かす。
沢山の学者が出てくる上にメンデルの法則に見られる配列の数式等、難解なところがある。理解不能な部分は読み飛ばしたが大枠を掴むだけでも進化論がいかに困難な問題を抱えながら、新たな
科学によって修正されて今に至ったかということがわかる。
いくつか挙げると、キリンの首は高い木の食べ物を食べるように伸ばし続けたから長くなったのではない、首の長いキリンが遺伝を引き継いで長くなったとか、サルが立って人間になったのではなくて、立つサルがサルから別れて人間の祖先になったとする。
同じようだが大いに違う。
人とチンパンジーのDNA(塩基配列)は98%同じだというと気分が悪くなる人がいるが、その2%がすごく違う、それは
98%の素材で作る料理を考えれば全く違うからだ。
動物のことを知ると人間の事がよくわかる。
利己的遺伝子と利他的遺伝子というのがある、自分のために行動するか、他者のために犠牲になるかということだ。働き蜂は生殖能力を持たないが女王蜂のために働く、それが利他的というものだ。より大きな目で見ればその方が強い子孫を残せるからだ。
人は自分を大切するが利他は家族、親類、地域と広がる、国家のために利他が働くと考えればナショナリズムは分かり易い。
利他はより広い目で見る遺伝子から生まれる。
領土問題も利他で見れば世界の中で考えられる。
戦争のない世界は究極の利他で生まれる。人間が進化するには、この利他の多い人を受け継ぐ遺伝子が必要だ。
残念ながら、時の首相はこの遺伝子が少ないようだ。