「ウルフ・ウォーズ」(著・ハンクフィッシャー)オオカミはこうしてイエローストーンに復活した。
1926年イエローストーン公園からオオカミが姿を消した。その50年前から公園には密猟者がエルク(シカの仲間)やオオカミの毛皮を捕るために横行していた。
その上1914年からはオオカミ根絶キャンペーンが始まった。オオカミが消滅してから約70年後の1995年、
イエローストーンにオオカミが戻ってきた。
この本はオオカミをめぐる70年の論争を感情に溺れず論理的に記述している。だからと言って単なる議事録ではない、著者のオオカミに対する
愛情がにじみ出ている。
なぜこんなにも時間がかかったのか、オオカミを自然に戻すことの賛否を問えば誰でも矛盾にぶちあたる。酪農業者の反対は一貫しているが賛成論には色々あってなかなかまとまらない。ばからしいことでこだわって一歩手前で挫折するそんな姿が浮き彫りにされる。
それでも著者達は賛成反対を別にして自分たちの主張が実現するように
誠意ある態度を貫き通す。動物愛護の真骨頂には頭が下がる。
この本の訳者は日本でもオオカミを復活させたいと活動されている人だが、イエローストーンで70年かかった問題を日本が踏襲するとは思えない。
一からやらなければならないだろう。
シカが増えすぎたこともあってほんのわずかだが日本もオオカミ復活にむけて生命が誕生する時のように
微動しだしている気がする。
ボクもオオカミ復活を望むけれど、家畜や人身に及ぼす被害をどう判断したらいいのか迷っている。我が家はイヌ連れでキャンプを楽しんでいる、小型犬だからオオカミが来たら太刀打ちできない。ある人がアメリカでオオカミ復活ができたのは
銃社会だからだと言っていた。キャンプ中に襲われたら撃ち殺してもいいからだ。
この本には
オオカミは彼等から人を襲う事はないという。家畜は襲っても人は襲わない、
ということは我が家のワンちゃんは襲われることになる。そのへんの折り合いがボクの中ではついていない。
オオカミは欧米では嫌われたが日本では
オオ神様と祀られた、共存の文化がある。
増えすぎたシカを減らすという合理的判断より大事な事がある。
日本の自然の中で野生動物の頂点にいたオオカミが日本の
自然の一部として復活したらいいという理由だ。ボクの意見はそれに近い、
もし導入となればタイリクオオカミだからニホンオオカミより大型にはなる。そんなことはすぐには実現しないだろうがあと70年たったら復活しているかもしれない、
思いを馳せることだけでもワクワクする。