[パンダの死体はよみがえる](著・遠藤秀紀)
動物園で一番人気ものはなんといってもパンダ、かわいい姿の一番は竹を手で引き寄せてその葉をつかんで食べるしぐさだ。
パンダには5本の指と硬い骨があってその6番目の指を使って上手く物をつかむと言われていた。
著者は多くの動物達の遺体に科学のメスを入れてその不思議を解き明かしているこの道の第一人者。パンダの6番目の指は随意に可動するものではなく手首と7番目の指ともいわれるものがあって物を掴むと解明し
世界的にも注目された獣医学博士だ。
戦後インドのネール首相から贈られた日本の子供の心を癒したゾウのインディラのことにも触れる、その1年前にタイからやってきた花子はいまだに
井の頭自然動物園で健在だから戦後は決して遠くはない。
戦争によって殺処分を余儀なくされた動物達の遺体の処理のずさんさを指摘して博物館の引き継いでいくべき事を提言している。
遺体や遺骨は生きている時よりもずっと長くしかも多くの事柄を私たちに教えてくれるからだ。
ニホンオオカミの生きた姿を見ることはできないが、残された数体の遺骨からその姿を再現して、雄大な動物の歴史の歩みを知ることができる。
大陸から離れた日本で動物達は固有に進化した、シカ、猫、鳥、クマ、オオカミは少し小型になって生きてきた。
小さな領域で命を繋ぐためだからだ。
一方北海道と本州とは違って、エゾオオカミ、エゾヒグマは大型だがその謎は北に行くほど大きくなる種の特性とのバランスで生じたと考えていいだろう。
1億年前に生きていた恐竜を今に観ることができるのはこうした学者達が
コツコツと地道に研究しておかげだ。
動物達を見ていると時代の捉え方が違ってくる、50億年前に地球が生まれ10億年後に命ができて2億年前に哺乳類となって、400万年前にサルが2本足で歩くようになった。
キリストが生まれてまだ2000年しか経っていないことを考えるとボクの半生はクシャミの程にもない。そのくしゃみの時間に知るのは自然のなかの
ほんのわずかでしかない。