同期会の席で読書家の友人Hから「絶対お勧め!」と言われたのは
「遠野物語殺人紀行」(著・中津文彦)。
調べてみたら28年前に書かれたものだった。
遠野という場所に魅かれ読んでみた。たちまちのうちにストーリーに入り込んでしまった。
札幌を飛び立った全日空機が墜落乗客は全員死亡。
たまたま大手新聞社の文芸部の結城は遠野に取材に来ていた。
死体が2人多い。
社会部で失敗し不本意な文芸部に行かされた結城は現場に一番乗り。
他社に一歩先んじた働きをしたがこのミステリーを追う任務は与えられず私的に解明するしかなかった。
心中した所に飛行機が墜落したとされたが結城は納得しない。
文芸部の取材を口実に事件を追うがその仕事が事件解明のキーとなる。
民俗学者の
柳田国男の世界が謎解きに加わる。
昔この地にいたとされるカッパや海岸に流れ着いた異人が村人から逃れて今でもその子孫がいるといった歴史の不思議が物語に組み込まれていく。
異人の子孫
であるとびきり美人のモデルや頭が抜群に切れる彫りの深い男は人知れず暮らした異人の近親者による婚姻のためといった記述等興味深い話が展開する。
28年の時が経っても新鮮なのは昔話の普遍性を巧みに盛り込んだからに他ならない。
「絶対読んでご覧」と言ったFの自信はそこにあった。