感涙の書である。読み終わった瞬間に教えてくれた友人に感謝のメールを送った。
「検察側の罪人」(著・雫井脩介)。返信が来た、「沖野、最上、その他・・」の誰に共感するか?だった。ちょっと考えて最上だと思った。
沖野は希望を胸に検事になった。
尊敬する先輩検事最上からの事案に心躍らせ主任検事としての初仕事に挑む。
松島という容疑者は老夫婦の殺人犯として取り調べを受けるうちに、もう既に時効となった殺人事件の犯人だったことを自供する。当時の検察がまだDNA判定が稚拙であったことによるが、今となってはその罪は問えない。
過去のいきさつから老婦人のホシは松島だと捜査は松島に絞られる。最上の指示もあって沖野は松島を問い詰める。松島の自白がないまま、拘留時間直前に松島の筆跡を残した競馬新聞に包まれた凶器が発見される。沖田は起訴状を書く。検察によって松島の犯罪がストーリー化され松島の
死刑求刑が濃厚なものとなっていく。
沖野は松島を追求する中で真犯人は別にいるような気がしてくる。新たな容疑者が捜査線上に浮かぶが急に消えてしまう。沖野は権力が働いたと考え最上に打ち明けるが最上は取り上げるどころか沖野を任から外す。
沖野は検事をやめて検察を暴く中で松島の時効になった事件で殺された娘は最上が妹のように可愛がっていた最上の学生時代の
下宿屋の娘だった事を知る。老婦人を殺した真犯人の死体が発見される。
正義とは何か?正しいことが正しく行われるのが法だが
法は果たして正義を守る事ができるのか?最上は裁き手となって正義を貫くが沖田の正義によって阻まれる。
全てが明らかになった後の拘置所での沖田と最上の会話に多くの読者が涙するだろう。
雫井俊介が僕の中で
読みたい作者の先頭に立ったことは間違いない。