|
乃南アサは難しいテーマを平易な文章で書く才能豊かな作家だ。「すれ違う背中」は姉妹旅行の行き道で読んだという義妹から家内が預かって僕の手元に届いた本だ。
主人公は前科者のアラサー芭子とアラフォー綾香の女性二人。出所後の暮らしぶりが描かれる。
仕方が無かったと言っても人を殺め芭子は20代のほとんどを刑務所で過ごし、綾香も芭子の半数の服役をした。ほぼ同時に社会復帰した二人は近くに住んで無二の友人として暮らす。
通常刑務者が社会復帰してもつながっていることはめったにないが、二人はムショ時代から引き合うものがあった。犯罪者は刑を終えても昔に戻るわけではない。二人は全てを失い社会に出された。
二人でいる事がどんなに心強いか、後ろ向きになりがちな人生が二人でいることで一筋の光を見出し、ちいさな希望の扉も開く。
不遇な環境にあってもネガティブにもポジティブにも生きることができる。
芭子は刑務所で覚えた縫製技術を活かして可愛い犬の服を作りそれが人気を呼びその収入がペットショップのアルバイト代を上回るようになった。綾香は朝早くから起き、重い小麦粉を運びパンを焼く、大変な仕事だがパンの焼ける匂いを嗅ぐと幸せな気分になる。おいしいパンも焼けるようになり、将来はパン屋さんを開くためにコツコツと仕事をする。前科があることを知られないように肩を寄せ合って生きる二人だが希望が二人を明るくする。
幸せの価値はひとりひとりが作り出すもの。どんなところにも幸せは宿る とこの本は優しく教えてくれる。
by willfiji
| 2013-12-05 17:30
| 読書
|
Comments(0)
|