「おしかくさま(著・谷川直子)」はその名の通り、お金(札)の神様の小説。
痛快小説というジャンルはあまり読まないが、文藝賞受賞の書評に惹かれて読んだ。
ATMをお参りするとお金が貯まるといういかがわしい宗教に46歳バツイチ女性ミナミがかかわったのは、
元教師の父親が足げに通う一軒家に父の教え子達がいて、
父は「おしかくさまの使者」に祭り上げられていた事にはじまる。
ユーモアたっぷりの展開の中で、お金とは何か?が語られる。
「おしかくさま」はインチキだと思っても「信ずる人が救われる」なら立派な神ではないのか?
仏教では人が死ぬと
戒名をつけてもらうが「何十万というお礼」をすることになっている。
神社で大量に売られているお守りやおみくじ、破魔矢等はなんの疑いもなく売られ、
それらをインチキだと言う人はあまりいない。
現代社会はお金がなければ夜も日もあけないし、「物を売ってお金を儲ける」のが普通なのに、
お金の儲け方ではなく「働くことこそ大切なのであってお金はその副産物に過ぎない」と多くの人は教育されている。
東日本大震災の寄付金はどのぐらいが妥当か?といった事もさまざま人に語らせる。
震災があって人の考え方が違ってきたことは確かだ。
「今でしょ!」とこの小説は生まれた。それがおもしろい。