「動物園革命」(著・若生謙二)は動物園の展示に永年関わった著者の自伝書とも言える本で、子供の頃からの動物園に対する思いの変遷が書かれている。
同じ時代を過ごしたボクにとっても見過ごしてきた時の流れを知る点で大変興味深い内容だった。
動物園には大きく
4つの役割がある。
①レクレーション・②教育・③・保護・④研究だ。
展示は①だけでは無く他の役割もあわせて持つ。著者はその事を革命という言葉を使って動物園のあるべき姿を提唱している。
旭山動物園が見事に復活したのは「行動展示」という方法を駆使して、動物の魅力的姿を来園者の目前に提示したことによる。
動物の固有の習性を知った上での展示だから
リアルな体験が感動を呼んでいる。
ボクが行っている上野や多摩動物園にも同じ流れの展示があってホッキョクグマが目前でジャックナイフスタイルで潜ったり、オラウータンが鉄塔を長い手を器用に使い渡ったりする。来園者の目はしばし
釘付けとなる。
新しい展示として行動展示の他に著者が提唱する生体的展示がある。
生息環境展示と言えば更にわかり易い。著者が世界各国の動物園を視察して自ら天王寺やズーラシアなどの動物園で実現しているものだ。その動物が暮らすそのままの環境を動物園の中に作るもの。
実際にその動物が生息するアフリカやアジアの森等
現地に出向いて調査してできるだけその環境に近い形で展示する。生息地で動物を発見した体験を来園者にしてもらう展示だ。動物園は進化している。
生物多様化が人類を救う という大きなテーマにむけて。見世物小屋ではなくなった動物園には継続した革命が必要だ。
命あるものの価値をどう伝えていくか?動物園からますます目が離せない。