乃南アサの「ボクの町」は何処にもいるような若者の警察官になりたての物語。
主人公は何処にでもいそうないい加減な若者で自分の将来も職業に対する使命感も何も持っていない。そのくせ「これがやりたかったものだろうか」と交番実習の中でもう辞めだと思う事がしばしばだ。
物事を真剣に考えた事がないから何をやるにも無責任。しかも自己主張は強い。耳にピアスの穴を開け警察手帳に元彼女のプリクラを貼って注意を受けても反省することは無い。
そんな若者が実習の中で様々な人に出会い、いろんな体験をして、もうしばらくは続けて行こうと思う所でストーリーが終わる。簡単な筋書きだが、登場人物の会話が世相を面白く描く。
若者がごく平凡な人の中で起きる犯罪や非凡な出来事を通して大人になって行く姿が綴られる。最初は今のいい加減な若者そのままだと思ったが次第にその怠惰さが現代社会を生きる
若者の術ではないかと思うようになり、熱く働いた僕らの時代に比べて清純さまで感じるようになった。
また、お巡りさんと言えば親しみ易いが、「権力嫌いな人やちょっとした交通違反で捕まった人は
警察官にいい印象はない」との箇所は妙に納得した。何かあったら一市民として協力する気持ちは持ち合わせてはいるが。警察官に対する僕の印象はこのポリスコメディーを読んでも変わるものではなかった。